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花さかじいさん

 

 

 

 日ごろ、犀川の堤を散歩する。季節ごとに野の花が楽しめる。春、桜が散ると近くで野菊が咲き、6月は立葵が、9月はコスモスが風にそよぐ。この光景を当たり前と思っていた。だが違うのだ。気がついた。

 春、桜が終わる頃、野菊が白い花を一面につける。秋口、コスモスの花のロードが、100m近く続く。咲き乱れる花に人々が集まってくる。花が終わると、人の足はバタリと止まる。背丈以上に伸びた茎は、葉を落とし枯れていく。

 花それぞれのシーズンが終わると、それをきちんと刈り取り、後片付けをしている方がおられるのだ。スギナや雑草は年中伸びていく。世話する小柄なおじさんは、いつも座り込んで炎天下の中雑草取りをしている。じっと無言の方だ。人々がコスモスの花々を見に来ることはあっても、その方は表に出ることはない。

 社内では、私たちも今日もしゃがみ込んでゴソゴソやっている。当たり前の事だが、商品は、毎年、時間をかけて、必ず手を入れて新しい版にする。前年と同じものを決して出さない。小石を除き、除草をし、後始末をして、新しい年度にそなえる。仕事は農業みたいに地味である。

石野 泰弘